top of page

代表挨拶

Group Representative

ごあいさつ

「食べる」を通じて、
「生きる」を豊かに。

「訪問歯科」と聞いて、あなたはどんなイメージを抱くでしょうか?

人それぞれ異なるイメージを抱くのではないかと思います。
 

私たちが提供する訪問歯科サービスは、患者様の人生に深く関わります。患者様やご家族に寄り添い、例えば「どうすれば自分の口で食べられるようになるのか」「患者様がどう生きたいと望んでいるのか」などを徹底的に考えながら、最適なあり方をご提案していきます。

 

「食べる」、その先の「生きる」と徹底的に向き合うからこそ、患者様やご家族からは心の底から感謝していただけます。感謝されるレベルが一段上と言っても過言ではありません。
 

私たちが提供する訪問歯科サービスは、非常に医療色が強いです。歯科・口腔外科、義歯、嚥下嚥下/口腔機能と幅広い知識・スキルが求められるだけでなく、全身疾患に関する深い知見、臨床哲学/医療倫理についての深い学びも必要となってきます。
 

医師や看護師などの医療領域、看護師など介護領域のプロとも連携し、チームで患者様と向き合っていく中で、歯科医師は「食べる」に関するスペシャリストとして協力していくことになります。医療のど真ん中で戦っている。そんなやりがいを日々味わえるでしょう。
 

こうした訪問歯科サービスを、私たちは全国に広め、当たり前にしていきたい。そのための体制づくり、仕組みづくりにも取り組み始めています。私たちが目指すビジョンに共感していただけるなら、ぜひ一緒にがんばっていきましょう。

令和6年7月1日

ihana訪問歯科グループ代表

三輪 俊太

(株)Fooide COO / 医療法人恵眞会理事長 / 歯科医師

エピソード

消えた不明熱

田中さんは、80歳を超えても食べることが大好きな男性でした。特に、孫たちと囲む食卓が田中さんにとって何よりの楽しみでした。しかし、数年前に患った脳梗塞の後遺症により、医師からはミキサー食しか食べてはいけないという指示を受けていました。
 

あるとき、田中さんは38度を超える高熱を繰り返すようになり、その度にミキサー食すら危うくなっていました。在宅医が田中さんの治療を担当していましたが、原因が特定できずに悩んでいました。田中さんは繰り返される発熱に苦しみ、在宅医もまたその解決策が見つからずに苦悶していたのです。
 

「誤嚥性肺炎の可能性が高いと思いますが、こんなに頻繁に高熱が出る理由がはっきりしないんです」と在宅医は田中さんの娘に説明しました。「薬の効果は一時的で、ミキサー食すら食べられなくなってきています。このままだと胃ろうを検討せざるを得ないかもしれません」と続けました。
 

田中さんの家族が途方に暮れていたとき、訪問歯科医師の佐藤さんが田中さんの家を訪れることになりました。在宅医は半信半疑ながら、藁にもすがる思いで訪問歯科医師の佐藤先生に診察を依頼しました。
 

わずか1ヶ月半後、在宅医は驚くべき知らせを受け取りました。田中さんが高熱を克服し、再び食事を楽しんでいるというのです。その理由が分からなかった在宅医は、佐藤先生に詳しく話を聞きました。

佐藤先生は、田中さんの治療について語りました。
 

「ご推察通り、誤嚥性肺炎が発熱の原因だったと思います。しかしその背景には、二つの原因がありました。一つは下の機能低下による口腔内の残留物の誤嚥、もう一つはその誤嚥物に細菌が多量に含まれていたことです」
 

「すぐに対応できる方法として、歯科衛生士による口腔ケアを行いました。たとえ誤嚥をしたとしても、細菌が少なければ体への侵襲は軽くて済むからです。実際、田中さんの熱はこれだけで37度台に下がりました」
 

「しかし、純粋に誤嚥すること自体は残っていたので、熱は継続していました。そこで、もう一つの原因であるした機能の低下へアプローチを行いました。脳梗塞発症後から期間が経過しているので、舌の機能を戻すよりは、今の舌の機能でも飲み込みやすい義歯を制作しました。これにより純粋に誤嚥の量が減少し、誤嚥の侵襲よりも田中さんの体力や免疫力が上回るようになったことで、発熱は治ったというわけです」
 

さらに佐藤先生は管理栄養士とも連携し、田中さんの食形態について相談しました。適切な栄養を摂取できるよう食事内容を見直し、体重増加と低栄養の改善を目指したのです。
 

在宅医は驚きと感動で佐藤先生に感謝の言葉を伝えました。「田中さんが再び元気になり、食事を楽しめるようになったのは本当に素晴らしいことです。歯科医師としてのアプローチがこれほど効果的だとは思いませんでした」彼は訪問歯科診療の重要性を改めて認識したそうです。

(補足)

(1)誤嚥性肺炎:誤嚥性肺炎には、細菌性肺炎、化学性肺臓炎、びまん性嚥下性細気管支炎(DAB)がある。田中さんの場合、口腔ケアによって細菌性肺炎が軽症化し、発熱が低下した。また、義歯の製作により口腔咽頭残留が減少し、嚥下後の誤嚥が減少したことで、患者の体力が誤嚥の侵襲に耐えられるようになり、発熱が低下した。

 

(2)舌接触補助床(PAP):田中さんはすでに義歯を使用していたが、舌の機能と調和していなかった。舌の機能を診断した上で、その機能と調和する義歯(舌接触補助床:PAP)を製作することで、誤嚥の量を減少させることができた。

 

(3)胃ろうの回避と食事の楽しみ:発熱を繰り返すことは、体に慢性炎症があることを示し、避けたい状態である。この症例では、歯科の介入により、食べる喜びを回復させただけでなく、胃ろうを回避することができた。発熱が収まり、田中さんは再び好きな食事を楽しめるようになり、生活の質が大きく向上した。

bottom of page